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語録 号外

†希有の花―白井きく (「からしだね」第97号2020年9月から)

 「白井きく 珠玉のことば」というブログを始めた。白井きく女史の著作の中から、私がメモしておいた文章を少しずつ世の中に紹介したいのである。なぜ私がそんなことをするかというと、女史の信仰に教えられるところ、共感するところが極めて大であるからである。キリスト教、特に信仰に関心をお持ちの方にはぜひ彼女の著作を読んでいただきたい。とは言っても、私が女史について知るところは、その著書を通じてのみであり、極めて少ない。ちなみに、一九九五年に発行された『神の国はどんなところか』の奥付にある略歴は次のとおりである。

 「一九〇五年。横浜に生まれる。一九二七年、旧制東京女子高等師範学校理科卒業、旧制埼玉県女子師範学校教諭。一九二九年、青山学院高等女学部(旧称)へ転勤。一九三一年、塚本聖書講演会に出席して聖書およびギリシャ語原典を学ぶ。一九四三年、教職を辞任、一九六一年、塚本聖書講演会解散後、独立して聖書集会をはじめ現在に至る。著書に、『ルカ福音書(上)(下)』『ローマ人へ』『使徒行伝の読み方』『マルコ福音書』『みんなで生きる』『いのちの泉をたずねて』『ヨハネの黙示を読む』『訳本・ヨハネの黙示』『聖書のこころ』『ピリピ人への手紙を読む』『夕暮れの頃に明るくなる』『ヨハネ福音書の原形』『ブルトマンと共に読むヨハネ福音書(上・中・下)』などがある。」
 
 要するに、女史は今日のお茶の水女子大学を卒業後、教職に就かれていたのであるが、十六年ほどで退職し、内村鑑三の高弟塚本虎二に師事。約三十年間、師の新約聖書の翻訳、機関誌「聖書知識」の編集等の事務を無給で手伝われた。生計は、数学の家庭教師をして立て、生涯独身で間借り暮らしだったそうである。塚本聖書講演会が解散の後は、ご自身で小さな聖書集会を持たれ、伝道を続けられた。また、塚本の元でギリシャ語をマスターし、ドイツ語にも堪能であったので、略歴にあるように聖書の翻訳や註解書、信仰書の発行にも力を注がれた。女史は一〇〇歳近くまで生きられ、『神の国はどんなところか』を出版されたのが九十歳のときであるから驚く。女史は世間的には殆ど無名であり、私も松山聖書集会の先輩が持っていた彼女の註解書によってその存在を知ったのである。私は素人ゆえに、誰にはばかることもなくここに記すのであるが、女史の信仰は、内村、塚本両師を超えた境地に達せられたものと信ずるものである。
 
 私は彼女の著書によって、新約聖書の要を学ぶことができた。これからも教えていただけるであろう。世の学者、専門家の註解書は難解、厖大、晦渋、煩瑣で結局何が言いたいのかはっきりしないことが多いのであるが、女史のものはそうではない。「一人びとりが自分の生活をもって神からの啓示に接して理解したものが、聖書註解につながる」と前掲書に書いておられるとおり、ご自身の信仰体験に裏打ちされた簡明、率直な、まさに珠玉のような書ばかりである。彼女に私淑するゆえんである。「他の人々が労苦し、あなたがたはその労苦の実りにあずかっている」(ヨハネ四・三八)というイエスの御言葉のとおり、私は彼女の蒔いた種を刈り取り、永遠の命に至る実を集めているのである。
 
 前述の通り、私は彼女のことを、その著書を通じてしか知らないのであるが、小柄で上品で知的な、名前のとおりのお綺麗な方であったろうと勝手に想像している。それで十分である。生前のイエスと面識がなかった聖パウロは、「わたしたちは、今後だれをも肉に従って知ろうとはしません。肉に従ってキリストを知っていたとしても、今はもうそのように知ろうとはしません。」(Ⅱコリント五・一六)と言っている。私も同様に、女史が著書の言葉を通じて私に語りかけるのを、聖霊の働きを介して聞くのみである。純粋な彼女の霊に出会うためには、現世の彼女の姿や暮らしぶりを知っていることがかえって邪魔になることもある。それはさておき、生涯独身であった彼女は、「天の国のために結婚しない者もいる」(マタイ一九・一二)というイエスの御言葉のとおり、神に特に選ばれ、イエス・キリストの花嫁として一〇〇年近く生き抜かれた。私のブログは、彼女がどのような信仰を持っておられたか、その精華のほんの一端をご紹介するにすぎないが、一度覗いていただきたい。どなたかこのブログをご覧になって、もっと女史の人となりなどについてご紹介いただけることを期待したい。私に力があれば、後世のために彼女の全集を発行したいものだと密かに願っているのである。

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